投資は金融商品に資金を配分し利益を追求する行為で、株式投資のスタイルには「バリュー投資」と「グロース投資」が主要です。バリュー投資は低評価な資産に投資し、その価値回復を期待する方法。対照的に、グロース投資は高成長企業の株を購入し、その成長から利益を得るスタイルです。各投資スタイルには固有のメリット・デメリットがあり、投資家は自身の投資目的やリスク許容度に基づいて適切なスタイルを選ぶべきです。
バリュー投資とは何か?
バリュー投資とは、株価が安く割安な銘柄を見つけて長期的に保有する投資スタイルです。バリュー投資家は、会社の本来の価値(内在価値)と株価(市場価値)の乖離(ギャップ)を利用して、安く買って高く売ることで利益を得ようとします。
バリュー投資の定義と歴史
バリュー投資は、1920年代にベンジャミン・グレアムにより提唱されました。彼は株式市場が短期では非合理的だが、長期で見れば会社の真の価値に収斂すると考え、内在価値を算出して割安株を選定しました。彼の弟子、ウォーレン・バフェットもバリュー投資を用い、米国株を使って、自身の投資スタイルを確立。割安なだけでなく、将来性や競争力を考慮して投資し、長期保有する戦略で巨大な富を築き上げました。
バリュー投資の指標と分析方法
株価収益率(PER)は株価を一株当たり利益で割り、割安度を示す指標。低PERは割安を示唆するが、将来性が低い企業も割安に見えるため、他指標との併用が必要。株価帳面価値比(PBR)は株価を一株当たり純資産で割り、株価と資産価値の関係を示す。PBRが1以下は割安とされるが、収益力や成長性を考慮する必要があり、他指標と併用するべき。自由キャッシュフロー(FCF)は営業からのキャッシュフローと投資活動のキャッシュフローの差で、収益力や成長性を反映し、企業の内在価値を評価する際に重要。
バリュー投資の代表的な投資家と銘柄
ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイのCEOで、長期保有戦略で巨額利益を実現するバリュー投資家として知られています。彼は素晴らしい企業を妥当な価格で購入することを重視しています。
ピーター・リンチはフィデリティのマゼラン・ファンド元運用責任者で、バリューとグロース投資の中間的スタンスをとり、日常の商品やサービス提供者への投資を重視。彼は消費者向け企業への投資で卓越した成績を残しました。
セス・クラーマンはバウポスト・グループ創業者で、保守的なバリュー投資家として、市場の過剰反応から生じる深い割安株を購入。危機時でも損失を最小限に抑える戦略を展開し、「市場は常に正しいとは限らない」と認識しています。
グロース投資とは何か?
グロース投資とは、将来的に高い成長が見込まれる銘柄を見つけて短期的に売買する投資スタイルです。グロース投資家は、会社の現在の価値(内在価値)よりも将来の価値(成長価値)に注目して、高い株価でも積極的に買うことで利益を得ようとします。
グロース投資の定義と歴史
グロース投資は1950年代に経済学者ジェームズ・フィッシャーにより提唱され、株市場は企業の成長性や革新性に基づいて長期的に収斂するとの考えに基づきます。フィッシャーは事業内容、経営陣、技術力、ブランド力等を分析し、将来成長が期待される銘柄に投資、高収益を実現しました。
その弟子、フィリップ・フィッシャーもグロース投資の成功者で、成長性だけでなく安定性や安全性も重視。彼は企業関係者との直接対話を重んじ、IBMやヒューレット・パッカード等の株を長期保有し、巨額利益を得ました。彼は投資対象企業の価値が時間と共に増すとの信念を持っています。
グロース投資の指標と分析方法
売上高成長率(SGR)は年間売上の増加率を示すが、高SGRが必ずしも利益や競争力の増加を意味しないため、他指標と併用が望ましい。利益成長率(EGR)は利益の増加率を示すが、一時的要因や不正による水増しの可能性も考慮し、他の指標と併せて分析が必要。予想株価収益率(PER)は予想利益を基に株価の割高度を測るが、将来利益の大幅増が見込まれる場合、割高と誤解されることもあるため、他の指標や分析と併用が必要です。
グロース投資の代表的な投資家と銘柄
ピーター・ティールはペイパルやパラティア社の創業者で、早期に革新的企業如フェイスブックやスペースXに投資するグロース投資家。彼は競争が進歩を阻害し、独占が進歩を促進すると主張しています。
キャスリン・ウッド、ARKインベスト社創業者兼CEOは、革新的セクター如人工知能やバイオテクノロジーに投資。テスラやスクエアなどの企業株を保有し、イノベーションが市場効率性を破壊し、市場がその価値を過小評価すると考えています。
ジム・シモンズ、ルネッサンス・テクノロジーズ社創業者は、数学や物理学のエキスパートを集め、数理モデルやアルゴリズムを用いて市場予測し、驚異的成績を残しています。彼は市場には予測可能なパターンが存在すると信じています。
バリュー投資とグロース投資のメリットとデメリット
バリュー投資とグロース投資にはそれぞれメリットとデメリットがあります。以下にそれぞれの投資スタイルの利点と欠点を比較します。
バリュー投資のメリット
バリュー投資は安定した業績と配当を持つ企業を選び、長期で安定収益を目指します。株価下落時に買い増しを行い平均取得単価を下げる戦略が取られ、株価回復時に大きな利益が期待されます。内在価値以上の銘柄に投資し、企業の財務状況や業界動向を厳密に分析することで、リスクを低く抑える投資アプローチが特徴です。
バリュー投資のデメリット
バリュー投資は成長性が低い企業を対象にし、株価上昇の機会は限られます。内在価値と市場価格の乖離の解消に時間がかかるため、長期保有が必要で、これが他の投資機会の損失を招くことがあります。内在価値の正確な計算と評価は難しいため、高い分析力と判断力、また市場の動向に流されず、自己の判断を固持する強い信念と忍耐力が求められます。
グロース投資のメリット
グロース投資は高成長・革新性のある企業に投資し、大きな株価上昇と短期的な高収益を目指します。投資先企業の将来的価値やポテンシャルが重視され、従来の財務諸表や業界動向の詳細な分析は必須ではありません。市場の動向や新情報に対して敏感で、インターネットやSNSを利用して情報収集を行います。
グロース投資のデメリット
グロース投資は、将来価値や期待に基づく高額銘柄への投資が主で、これが株価の大幅な下落リスクをもたらします。業績や技術の悪いニュースによる急落もあり、短期的な大損失の危険性が伴います。成長・革新性の高い企業への投資が多いため、他投資家やファンドとの競争が激しく、最新情報の素早い取得と迅速な判断・行動が求められる環境です。
自分に合った投資スタイルの選択方法
バリュー投資とグロース投資は、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持つ投資スタイルです。では、自分に合った投資スタイルはどうやって選ぶのでしょうか?以下に自分に合った投資スタイルの選択方法を紹介します。
自分の目的と期間を明確にする
投資スタイル選定前に投資目的と期間を明確化することが重要です。投資目的には、長期での安定収益を目指す「資産形成」、短期での高収益を追求する「資産増加」、及び市場や企業動向の観察や自己の判断力を試す「趣味・楽しみ」が考えられます。一般に、資産形成はバリュー投資、資産増加はグロース投資が適しており、趣味・楽しみの目的ではどちらの投資スタイルも選択可能です。
自分の性格と嗜好を理解する
投資スタイル選択において、リスク許容度の確認は欠かせません。リスク許容度は投資における損失許容範囲や価格変動への対応力を指し示します。具体的には、投資損失時の耐容損失割合、利益実現の割合、株価変動時のチェック頻度などが考慮されます。通常、リスク許容度が高い投資者は「グロース投資」に適しており、逆に低い投資者は「バリュー投資」が適しています。
まとめ
本記事では、バリュー投資とグロース投資の定義、歴史、利点および欠点について説明しています。これらの投資スタイルは、独自の特徴とメリット・デメリットを有します。投資スタイルを選択する際には、個人の投資目的、投資期間、性格、リスク許容度を考慮し、最も適したスタイルを選んで賢明で楽しい投資活動を展開しましょう。